こんばんは,今回もまた,カオス.あの有名な写像について.
ロジスティック写像(logistic map)
ロジスティック写像は,
Xn+1=a*Xn*(1-Xn) 0<=a<=4, 0<=X0<=1
で表される写像です.
これまた簡単な2次式です.
もともと,ロジスティック方程式という微分方程式がありました.
dN/dt=r(K-N)N
ロジスティック方程式
N - 個体数
r - 相対内的増加率
K - 環境収容力
この方程式は,個体群生態学において,個体群成長のモデルとして考案された微分方程式で,次のような性質を持ちます.
・個体数N=0では,増加率は0.
・個体数が増加するにつれて,増加率は減少する.
・環境の収納可能個体数には限界があるので,N=Kの時,増加率は0.
で,この微分方程式を解くと,
N=K/(1+exp(rK(t0-t)))
となります(t0は初期値).ちなみの上の解は,N→0(t→-∞),N→K(t→∞)となります.
というわけで,微分方程式の時はわけもなく解くことができました.
しかし,これを差分方程式にすると,途端に難しくなります.
ロジスティック写像の振る舞いは,aによって,次のようになります.
0<=a<=1
Xnは0へ単調収束.
1<a<=2
Xnは(a-1)/aへ単調収束.
2<a<=3
Xnは(a-1)/aへ振動しながら収束.
3<a<=3.5699456
Xnは2のべき乗個の周期点を振動.
3.5699456<a<=4
Xnは不規則で,特定の周期をもたない(カオス領域).
ただし,Xnが周期的になる領域が存在(周期性の窓).
文章や式だけでは,さっぱり分からんので,可視化しましょう.
下に示す分岐図は,縦軸にXn,横軸にaを取った時,(a, Xn)をプロットしたものです.
Fig.1 ロジスティック写像の分岐図(0<=a<=4,0<=Xn<=1)
aが3.5699456(ファイゲンバウム点といいます)を超えたあたりから,カオスな事になっていきます.
このカオス領域では,初期値X0がほんのわずか異なっただけで,将来の値Xnは大きく変わってしまいます.この写像にこれ以上深入りするのは止めにしておきましょう.
ところで,Fig.1はあまり綺麗ではありません.画像が全体的に滑らかでないです.ちょこっと調べた結果,分布の密度を画像のピクセル値に反映すればよいようです.
実際にやってみたところ,下のような図が出来ました.
Fig.2 ロジスティック写像の分岐図(分布密度版,0<=a<=4,0<=Xn<=1)
さらに右端(3.5<=a<=4)を拡大してみるとFig.3,Fig.4のようになります.
Fig.3 ロジスティック写像の分岐図(分布密度版,3.5<=a<=4,0<=Xn<=1)
Fig.4 ロジスティック写像の分岐図(分布密度版,3.5<=a<=4,0<=Xn<=1)
Fig.3,Fig.4は配色を変えてあります.
というわけで,単純な2次式から,こんな美しい画像が生成できました.
参考文献
Wikipediaの執筆者たち.“カオス理論”.Wikipedia.<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%AA%E3%82%B9%E7%90%86%E8%AB%96>.(参照2009年2月6日)
森川浩.“ロジスティック写像”.<http://www2.neweb.ne.jp/wc/morikawa/log.html>.数理科学美術館.(参照2009年2月6日)
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