2009年7月24日金曜日

数学 #5 迷い歩き

問題:
"歩行者"は,x=0から出発して,前(+x方向)か,後(-x方向)へ1歩ずつ進む事が出来る.
前,後,どちらへ進むかは確率的であり,P(+x)=P(-x)=0.5.
この時,"歩行者"がN歩あるいたとすると,出発点(x=0)からどれだけの距離にいる事になるか.

直感的には,どちらへ行くにも等確率だから,"x=0にいる",と考えられますが….

実験:
歩行者:8人


Fig.1 256歩


Fig.2 1024歩


Fig.3 4096歩

それぞれの画像に置いて,右端が(256, 1024, 4096)歩あるいた時の歩行者の位置で,1つ左のピクセルが,(255, 1023, 4095)歩あるいた時の位置,1つ左のピクセルが,(254, 1022, 4094)歩と,行程が続いています.
また,出発点からの距離の自乗を
D^[i]=distance
と表示させています.

それぞれの歩数における,距離自乗平均は,
256[歩] - 348[歩2]
1024[歩] - 1232[歩2]
4096[歩] - 4793[歩2]
でした.

これはどうなっているのかというと…

検証:

N歩あるいた時の出発点からの距離を,統計的に求めてみます.

Di
をi歩あるいた時の,出発点からの距離とします.
[DN2]
を求めます([X]はXの期待値です).
まず,
[D12]=1
は明らかです(0の地点から,1歩だけ歩いたから,距離の自乗は(±1)2=1).

そして,DNを,DN-1で表すと,
DN=
DN-1+1
or
DN-1-1
ですので,両辺自乗で,
DN2=
DN-12+2DN-1+1
or
DN-12-2DN-1+1
orを挟んだ2つの式は,どちらも等確率で起こるので,
DN2の期待値は,
[DN2]=
{[DN-12+2DN-1+1]+[DN-12-2DN-1+1]}/2
=[DN-12]+1
そして,[D12]=1より,
[DN2]=N
となります.

rms(二乗平均平方根)で表すと,
Drms=√N
となります.

結論が出ました.
ということで,実はN歩あるいた場合,出発点からの距離(の期待値)は√Nになるのでした.
先の実験結果を見ると,平均値は,期待値に"割と"近いことが分かります.

ちなみに,1ステップにおける歩数を,±1ではなく,[-1, +1]などにすると,より面白くなります.

2 件のコメント:

わたはり さんのコメント...

NEWTONの今月号に,まさに扱われてましたね。

todo さんのコメント...

あらま,知らなかったです.
因みに記事を書く際には,主として,ファインマン物理学(1)の確率論の内容を参考にしました.